猫の血液検査結果の読み方

猫の血液検査の結果は、一つの数字ではなく「経過(トレンド)」として読むのがコツです。腎臓・肝臓・甲状腺の値を、わかりやすい言葉で解説します。

2026-01-06

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数字とアスタリスク、見慣れない略語がびっしり並んだ一枚を獣医師から手渡された瞬間、不安がこみ上げてくる——そんな経験をされた方は少なくないはずです。この記事では、高齢の猫や慢性疾患を抱える猫の検査でよく登場する項目を一つずつ解説しながら、それ以上に大切な「臨床医が実際に行っている読み方」、つまり一枚のスナップショットではなく時間の流れの中の物語として読む方法をご紹介します。

猫の血液検査結果は、まずどこから読み始めればよいですか?

まずは一枚を二つの検査に分けて考えてみてください。一つは**生化学検査(chemistry panel)で、腎臓や肝臓といった臓器の状態を示す値です。もう一つは血球計算(CBC)**で、赤血球・白血球・血小板を数えるものです。その上で、愛猫の測定値が並んだ列と、その隣にある検査機関の基準範囲(リファレンスレンジ)の列を見比べます。「高い(high)」「低い(low)」と印がついている項目は、単にその範囲から外れているというだけで、それ自体が診断ではなく「相談すべきサイン」にすぎません。

本格的に読み込む前に、いくつか頭に入れておきたいことがあります。

高齢猫の標準的な血液検査には、実際どんな項目が含まれますか?

高齢猫向けの一般的な検査では、生化学検査・CBC・総 T4(甲状腺)、そして多くの場合は尿検査がセットになっています。生化学検査には、腎臓の指標(クレアチニン、BUN、SDMA、リン)、肝酵素(ALT、ALP)、電解質、カルシウム、血糖、総タンパクが含まれます。CBC では赤血球・白血球・血小板を数えます。

米国動物病院協会(AAHA)と米国猫獣医協会(AAFP)は、2021 AAHA/AAFP 猫ライフステージガイドラインの中で、すべての猫に少なくとも年 1 回の身体検査を、高齢猫には半年ごとの検査を推奨しており、検査項目は年齢とリスクに応じて選ぶよう示しています。この間隔こそが、過去の結果を記録に残しておく価値を裏づけています。一回一回の検査が、長い一本の線の中の一つの点になっていくからです。

腎臓の値(クレアチニン、SDMA、BUN、リン)は、どう読めばよいですか?

腎臓の指標は、決して単独ではなく「グループ」として読みます。クレアチニンSDMA はどちらもろ過能力を推定する値で、BUN は腎臓だけでなく食事や水分状態にも左右され、リンは腎臓病が進むにつれて上昇しやすくなります。複数の値が数か月かけて同じ方向へ動いているとき、そのパターンは、たった一つの数字よりもずっと多くを物語ります。

ここで早期発見の鍵を握るのが SDMA です。Hall らによる **Journal of Veterinary Internal Medicine(2014)**の報告によれば、SDMA は腎機能のおよそ 25% が失われた段階で上昇し始めることがある一方、クレアチニンや BUN はおよそ 75% が失われるまで正常範囲にとどまることが多いとされています。だからこそ SDMA は、クレアチニンよりも数か月早く上昇することがよくあるのです。**国際腎臓関連協会(IRIS Staging of CKD, 2023)**は、慢性腎臓病のステージ分類にクレアチニンと SDMA を併せて用いており、猫のクレアチニンのステージはおおむね次のとおりです。ステージ 1 は 1.6 mg/dL 未満、ステージ 2 は 1.6〜2.8 mg/dL、ステージ 3 は 2.9〜5.0 mg/dL、ステージ 4 は 5.0 mg/dL 超。さらに詳しくは、SDMA とは何か猫の CKD(IRIS ステージ分類)のガイドをご覧ください。

肝臓の値と甲状腺の数値は、何を教えてくれますか?

ALT は、肝臓の値の中でも主役となる酵素です。肝細胞が傷つくと血液中に漏れ出すため、ALT が高いということは肝細胞がダメージを受けているサインであって、特定の病名を指すものではありません。総 T4 は甲状腺をスクリーニングする値で、高齢の猫では甲状腺機能亢進症が多いため定期的にチェックされます。どちらも結論ではなく、「さらに確認しましょう」という合図だと考えてください。

実用的なポイントをいくつか挙げます。

CBC(血球計算)の部分は、何を教えてくれますか?

CBC は、血液に溶け込んだ化学成分ではなく、血液中を流れる「細胞」を数える検査です。酸素を運ぶ赤血球、免疫を担う白血球、止血を助ける血小板を報告します。慢性疾患を抱える猫にとっては、赤血球の数値が最も重要です。長く続く腎臓病には、貧血がしばしば伴うからです。

CBC でよく目にする用語をいくつか挙げます。

これらはストレスや採血の影響でも動くため、CBC は生化学検査や、愛猫の見た目・ふだんの様子と併せて読み解きます。

元気そうなのに、なぜ値に異常の印がつくのですか?

異常の印(フラグ)は、単にその値が検査機関の基準範囲から外れているという意味にすぎません。基準範囲は健康な動物の集団をもとに作られているため、元気な猫に軽度のフラグがいくつか出るのはよくあることで、多くは慌てる必要のないものです。ストレス、直前の食事、軽い脱水、あるいは個体差といった正常な変動だけでも、病気とは関係なく値が基準を超えることがあります。意味のあるフラグと無害なフラグを見分けるのは、文脈と再検査の役割です。

フラグを冷静に受け止めるうえで助けになるのは、次の三点です。

獣医師が一つの軽いフラグに反応する代わりに「もう一度測ってみましょう」と言うのは、まさにこのためです。

なぜ、たった一つの数字よりも経過のほうが大切なのですか?

猫の体は、値が動き出す前に多くのことを自前で補ってしまうため、変化の方向と速さにこそ本当のサインが宿っています。クレアチニンが 3 回の検査で 1.4 → 1.7 → 2.0 とじわじわ上がっているほうが、ぽつんと一つだけの 2.0 よりも、はるかにはっきりと事態を物語ります。それぞれの指標を時間軸に沿って描き出すことで、バラバラの報告書が、あなたと獣医師が一緒に動ける一本のトレンドラインに変わります。

ここで力を発揮するのが、長く記憶を残しておくことです。古い報告書を診察に持参すれば、フラグのついた値が新しく出たものなのか、安定しているのか、悪化しているのかを獣医師が把握でき、それによって対応の緊急度も変わってきます。

通院と通院の合間に、これらをどうやって記録しておけばよいですか?

基準範囲を暗記する必要はありません。必要なのは、保存して比べられる「場所」です。Pawtient AI の血液検査スキャンと AI による解釈を使えば、検査報告書を撮影するだけで、各項目がわかりやすい言葉で記録され、これまでの結果と並べてグラフ化されます。次の診察には、すでにトレンドが目の前にある状態で臨めます。検査値の翻訳機能よくある質問も、ぜひお役立てください。

Pawtient AI は AI アシスタントであり、セカンドオピニオンを提供するものです。診断を下すものではありません——最終的な判断は、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。

Sources

Pawtient AI Editorial Team

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